インフラとしての携帯電話 (98-11-22)

デビッドカードが試験運用されている。これは銀行のキャッシュカードを、 あたかもクレジットカードのように使って買い物ができるというシロモノ。 クレジットカードとの違いは、実際にその場で金額が引き落とされるから、 残高不足だと買い物できず、 カードローン地獄にならずに済むという消極的な理由の他に、 デビッドカードが使える店が増えれば財布がわりになり、 お金を持ち歩かずに済むかもしれないという点がある。

しかし困ったことに残高確認ができない。 残高がわかってしまうのはプライバシーの問題があり、 お店の人がわかるのは不足しているか足りているかだけ。 残高確認をするためだけの機械が町中にあれば問題はないが、 手数料のとれないものがそれだけ普及するはずもない。 では、プリペイドカードみたいに、 残高をカード表面に表示するようなしくみがあればいいと思われるが、 そんなことをすれば店の人にも拾った人にも残高まるわかりである。

で、携帯電話。 携帯電話の普及率はめざましく、もうほとんど誰でも持っているようになった。 携帯電話を誰でも持っているなんてことは誰でも知っている。 が、気づいていないかもしれないが、この普及は、 非常に大きなインフラの整備に成功したということでもある。 なんとなれば、ちょっとした入力と計算と表示ができ、さらに通信もできる機械を、 ほぼ全員に携帯させることを可能にしたのである。 今まで電子手帳を持ち歩いていた人もいるだろうし、 ノートパソコンを持ち歩いていた人もいるだろう。 でもこれは社会全体から見るとごく一部だった、 ところがいまや、ほぼ理想的な携帯機器を、 ほぼ全員に携帯させることに成功したのである。これを利用しない手はない。

携帯電話に磁気カードリーダをつけてデビッドカードの残高照会ができるようにする、 とか携帯電話を現在のテレホンバンキングの端末にする、 というのを考えがちだが、 そうではなくて携帯電話にキャッシュカードとしての機能を持たせてしまうのである。 つまり、銀行のキャッシュコーナーに携帯電話を入れてお金を引き出すのであり、 デパートで携帯電話を提示して買い物をするのであり、 携帯電話を提示して電車に乗るのである。 あなたは携帯電話の他には、キャッシュカードもクレジットカードもプリペイドカードも身分証明書も、もちろんお金も持ち歩く必要もないのである。

提示の方法がちょっと面倒だが、 弱い電波が届くかどうかで提示範囲(半径10cm程度)にその携帯があるかどうかを 識別し、ついでに通信もする方法で当分は良いと思う。 さらに各携帯にGPSのような位置検出装置がついていて、 弱い電波のような手段を用いずとも提示できると面白いけど、 まあそういうのは当分先でしょうね。

06-4-13 追記
弱い電波を用いずとも提示というのは、つまり、 10cm単位で位置がわかるGPSを備えていればfelica機能は不要、ということ。 たとえば改札。ある規定の位置範囲内にその携帯が来たら、 必要なら携帯電話の通信機能で基地局経由でその改札ゲートと通信を行って、 改札ゲートを開けばいい。 つまり「どこでも改札ゲート」ができちゃう。 主催者側は携帯電話を使って「ゲート範囲」を定義し、 そこを「チケット情報を保有している」携帯が通ったら 主催者側の携帯にメッセージが届くようにしておけば、 いわゆるモギリの代わりになる。 あらかじめチケット情報がない客にその場払いもできる。 まあ屋外でも屋内でも10cm精度を出せるかという点がありますけど。

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